三国志モバイル人物伝

漢陽（あるいは武威）の人《後漢書董卓伝》。予州刺史周慎の子《後漢書献帝紀》。

『許靖伝』『後漢書董卓伝』ではともに周[王必]を漢陽の人とするが、『董卓伝』『後漢書同伝』に引用する『英雄記』では「字は仲遠、武威の人」としている。武威の周仲遠とは別人ではないだろうか。また『後漢書』は彼の名を「周[王必]」とし、『三国志』および『英雄記』は「周[ﾋ]」とする。周[ﾋ]は周[王必]と同人とみて表記を統一した。

中平六年（一八九）、朝政の実権を握った董卓は、少帝劉弁を廃して陳留王劉協を帝位に即けようと計画し、袁紹にそれを相談したところ、袁紹は官職を棄てて逃亡した。董卓は袁紹の首に賞金をかけようとしたが、侍中周[王必]と城門校尉伍瓊・議郎何[禺頁]は袁紹のためを図り、「袁紹は廃立の大事に恐れをなして逃げただけで、大それた野心など持っておりませぬ。いま賞金をかければ変事が起こるに違いありません。袁氏は四代にわたって三公を出す家柄で、門生故吏が天下に大勢おりますから、彼らが集結して挙兵すれば山東は公のものでなくなりますぞ」と董卓を説得した。そこで董卓は袁紹を勃海太守に任じた《袁紹伝・後漢書同伝》。

董卓は周[王必]を吏部尚書に任命し、侍中伍瓊・尚書鄭泰・長史何[禺頁]・尚書郎許靖とともに人事抜擢を任せた。周[王必]らは党錮事件のため出世が遅れていた名士を続々と登用した。そのおかげで処士荀爽は司空、尚書韓馥は冀州刺史、侍中劉岱は[ｴﾝ]州刺史、孔[ｲ由]は予州刺史、張咨は南陽太守、張[ﾊﾞｸ]は陳留太守になることができたのである《董卓・許靖伝・後漢書董卓伝》。

初平元年（一九〇）正月、袁紹・韓馥らが董卓討伐の義兵を挙げた。周[王必]・伍瓊は朝廷にいて密かに彼らと手を組んでいた。二月、董卓が山東軍を恐れて長安に遷都しようと提議したところ、督軍校尉周[王必]は、城門校尉伍瓊・太尉黄[王宛]・司徒楊彪とともにそれを諫止した。董卓は怒り狂い、「諸君が善良な士を抜擢任用しろと言うから、董卓は君の計略を採用したのだぞ。それは天下の人々の心に背かないためだった。それなのに諸君が採用した連中は着任するやいなや董卓に歯向かいやがる。どうして董卓を裏切るのか！」と周[王必]を叱責して外へ連れ出し、庚辰、伍瓊とともに斬首した《許靖伝・後漢書献帝紀・同董卓伝》。

史書は周[王必]の官位を「侍中」といったり「吏部尚書」「督軍校尉」といったりしている。時系列に沿って並べ替えると、侍中から吏部尚書、督軍校尉へと推移しており、矛盾はしていない。督軍校尉については未詳。

【参照】袁紹 / 何[禺頁] / 韓馥 / 許靖 / 伍瓊 / 孔[ｲ由] / 黄[王宛] / 周慎 / 荀爽 / 張咨 / 張[ﾊﾞｸ] / 鄭泰 / 董卓 / 楊彪 / 劉協（陳留王） / 劉岱 / 劉弁（少帝） / [ｴﾝ]州 / 漢陽郡 / 冀州 / 山東 / 長安県 / 陳留郡（陳留国） / 南陽郡 / 武威郡 / 勃海郡 / 予州 / 王 / 議郎 / 三公 / 司空 / 刺史 / 司徒 / 侍中 / 尚書 / 尚書郎 / 城門校尉 / 太尉 / 太守 / 長史 / 督郡校尉 / 吏部尚書 / 処士 / 党錮 / 門生故吏