三国志モバイル人物伝

字は忠明《後漢書董卓伝集解》。武威郡の人《賈[言羽]伝》。

初平元年（一九〇）三月、董卓は洛陽の宮殿・人家を焼いて天子を長安に遷したが、このとき東中郎将董越を弘農郡黽池に、中郎将段[火畏]は同郡華陰に、中郎将牛輔を河東郡安邑に、その他の中郎将・校尉も諸県に駐屯させて山東の義兵を防がせた《後漢書董卓伝》。段[火畏]は農業に力を入れて略奪を働かなかった《賈[言羽]伝》。学者董遇や楽士李堅らが段[火畏]に身を寄せている《王朗伝・晋書楽志》。

董卓が誅殺されると、李[ｲ寉]・郭[ｼ巳]らが天子を脅して政権を握ったが、仲違いしてせめぎ合った。興平二年（一九五）七月、天子の御車が長安を出立して洛陽に向かう途中、郭[ｼ巳]が天子を脅迫して[眉β]に連れて行こうと企てた。楊定・楊奉・董承が反対したので、郭[ｼ巳]は李[ｲ寉]と手を結んだ《後漢書董卓伝》。

御車が華陰に到着すると、寧輯将軍段[火畏]は天子に御服を献上し、公卿以下に物資を援助し、わが陣営に遷座されよと天子に請願した。ところが段[火畏]は馬上で手綱をとったままで下馬しようとしなかった。そこでもともと段[火畏]と仲が悪かった楊定は彼が謀叛を企てていると誣告した。天子が「段[火畏]はわざわざ迎えにきてくれたのに、どうして謀叛などというのか」と問うと、楊定と親しかった侍中[禾中]輯は「御前にいたっても下馬せず、顔色が尋常ではありません。必ずや異心を抱いておりましょう」と答えた。大尉楊彪が「段[火畏]が叛逆しないことを臣らは死をもって保証いたします。御車を彼の陣営に幸なされませ」と擁護した《後漢書董卓伝》。

そのころ李[ｲ寉]・郭[ｼ巳]は天子を東方にやったことを後悔し、段[火畏]を支援するという名目で接近し、内心では天子を誘拐して西方に連れて行こうと企てていた。天子が段[火畏]の心中を計りかねていると、董承・楊定は「いま郭[ｼ巳]が七百騎を率いて段[火畏]の陣営に入りました」と言上した。こうして天子は楊定らを信じ、段[火畏]の陣営を避けて弘農の東の谷間で露営した。李[ｲ寉]・郭[ｼ巳]は天子の軍勢を襲撃し、楊奉・董承と仲が悪かった張済も李[ｲ寉]らに同調した。楊定は李[ｲ寉]の仲間であるとして、段[火畏]の陣営を十日余りにわたって攻撃した。それでも段[火畏]は天子のために御膳を奉献し、百官に資金援助して二心を抱くことはなかった《後漢書董卓伝》。

李[ｲ寉]に仕えていた賈[言羽]は、彼から受けた宣義将軍の印綬を朝廷に返還し、同郡出身の段[火畏]に身を寄せて華陰に行った。賈[言羽]にはもともと名声があり、軍中でも期待の的となった。段[火畏]は軍勢を奪われてしまうのではないかと内心恐れたが、表面では賈[言羽]に敬意を払って礼遇をきわめて篤くした。賈[言羽]が南陽に駐屯していた張繍に招かれて立ち去ると、彼が張繍と自分とのあいだを取り持ってくれるのではないかと期待し、彼の家族を手厚く世話した《賈[言羽]伝》。

建安三年（一九八）四月、謁者裴茂に従って李[ｲ寉]を討伐し、三族皆殺しとした《後漢書献帝紀》。その功績によって安南将軍・[ﾋﾞﾝ]郷侯（[ﾋﾞﾝ]郷亭侯とも）となった《後漢書董卓伝》。そののち鎮遠将軍・領北地太守となったようである《後漢書董卓伝集解》。

段[火畏]は中央に召されて大鴻臚・光禄大夫となり、同十四年、病にかかって卒去した《賈[言羽]伝・後漢書董卓伝》。

【参照】賈[言羽] / 郭[ｼ巳] / 牛輔 / [禾中]輯 / 張済 / 張繍 / 董越 / 董遇 / 董承 / 董卓 / 裴茂 / 楊定 / 楊彪 / 楊奉 / 李[ｲ寉] / 李堅 / 劉協（天子） / 安邑県 / 華陰県 / 河東郡 / 弘農郡 / 山東 / 長安県 / 南陽郡 / [眉β]県 / [ﾋﾞﾝ]郷 / 武威郡 / 黽池 / 北地郡 / 洛陽県 / 安南将軍 / 謁者 / 郷侯 / 校尉 / 公卿 / 光禄大夫 / 侍中 / 宣義将軍 / 大尉 / 大鴻臚 / 太守 / 中郎将 / 鎮遠将軍 / 亭侯 / 東中郎将 / 寧輯将軍 / 夷（三族皆殺し） / 印綬 / 学者 / 楽人 / 領